2012年8月13日(月曜日)16時37分 配信
岩崎恭子さん&中村礼子さんインタビュー対談
london.yahoo.co.jp/pg/column/iwasaki_nakamura_01.html
スポーツナビより
1992年バルセロナ五輪、14歳6日という年齢ながら女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した岩崎恭子さん。その年齢と、「今まで生きてきた中で、一番幸せです」と喜びを語ったことで、一躍注目を浴びた。
一方、2004年アテネ五輪と08年北京五輪の女子200メートル背泳ぎに出場した中村礼子さんも2大会連続で銅メダルを手にし、女子競泳界で輝かしい成績を収めた。
常に世界のトップで戦ってきた五輪メダリストの岩崎さんと中村さん。お二人は現役引退後、結婚、出産され、今はそれぞれ娘さんを持つママとして、日々子育てと仕事を両立している。そんなお二人に、現役時代のこと、ママになってからの苦労など、心のうちを聞いた。
■「ママ」になって分かる、母親のありがたみ
――現在は「ママ」となられたお2人ですが、まず初めにご自身の「お母さん」の話を聞かせて下さい。
岩崎:礼子も私も、まず母とは顔がそっくりで(笑)、試合会場に応援に来てくれるたび、『恭子ちゃんのお母さん来てたよ』と周りからすぐに気づかれるほどよく似ています。母は料理が得意で、選手時代の食生活はすべて母の手料理でした。練習や試合がある時も私より早く起きておにぎりを作ってくれたり、高校時代も『たまには学食で食べたいから今日はいらない』と言っても、毎日お弁当を作って持たせてくれました。母のサポートがなかったら無理だっただろうなと思うぐらい、支えてもらいました。
中村:うちもお弁当でした。冷凍ものは一切使わず、いつも手作り。毎日お弁当を作るって、結構大変だっただろうなと今、自分が親になってみてあらためて感じます。
岩崎:やってもらっている時は、どこかで当たり前だと思っていたけれど、当たり前じゃないよね。大学時代に1人暮らしをした時、それから結婚、子どもが生まれてからはより一層親の大変さ、ありがたさを感じるようになるよね。
中村:本当に。お母さんはすごい、と思うことばかりです。
――ご自身の妊娠、出産を振り返って大変だったことは?
中村:妊娠期間中は特に不安もなく過ごしていましたし、気持ちも安定していて自由も効きました。予定日通りに生まれてくれたし、何も不安のない幸せな妊婦生活でした(笑)。生まれてからは本当に大変だったので……。
岩崎:予定日通りに生まれたの? いいなぁ。私は予定日より35日も早く生まれてしまって、とにかくびっくりしたので、生まれた瞬間は感動よりも心配で仕方なかった。最初に破水して、なかなか陣痛が始まらないと思っていたら急に痛みが来て、分娩室に入ったら1時間で生まれちゃったし、35日も早いのに2600グラムもあったの(笑)。
中村:1時間は早いですね! 初めて聞きました(笑)。私は4~5時間でしたが、それも早いと言われたぐらいなので……。
岩崎:濃縮されている分、ものすごく痛かったよ(笑)。
中村:出産以上に、私は娘の夜泣きがひどくて、水泳の練習以上に大変でした。母と交代で抱っこして、やっと寝てくれるので毎日とにかく大変で……。思い出したくないぐらい、つらかったです(笑)。私が赤ちゃんのころはよく寝る子で、夜泣きはしなかったらしいんです。でも、よく泣くところは似ているのかな(笑)。スイミングに通い始めてからも、2年ぐらいずっと『行きたくない』と泣いていたと母に聞きました。
岩崎:お母さんすごい! 普通それだけ泣かれたら、数週間で『この子には合わないんだ』と辞めさせるよ。諦めないで通わせ続けたことが素晴らしいね。
中村:そうですよね。今は娘がベビースイムに通っていますが、同じように泣くんです。でも『これも仕方ない』と思って見守っています(笑)。
■オリンピアンの子供として、目指してほしいこと
――母親もアスリート、岩崎さんは御主人もアスリートですが、お子さんにも水泳、スポーツをやってほしいですか?
岩崎:水泳は身体にいいのでやらせる予定ですが、だからと言って水泳選手になってほしいとは思わないし、女の子なのでラグビーはやらないだろうし(笑)。絶対にスポーツをやらせたい、とは思いません。娘も私と同じで好奇心旺盛なので、好きなものを続けてくれたらいいなと思っています。
中村:何かやりたいことを見つけてくれるのが一番いいですよね。何もしたくないと言われちゃうと一番大変かな。子育ては確かに大変だけど、水泳と同じように、自分が選んで望んだ環境なので、日々幸せを感じますよね。
岩崎:子どもがグズったり、自分が疲れている時はイライラしてしまうこともあるけれど、それを子どもにぶつけてもかわいそう。自分の心に余裕を持たないとダメだよね。常に前向きではいられないけど、下を向くより前を向いたほうが視野も広がるし、楽しく生活できる。まずは私が楽しんじゃえと思うよね。そこは選手時代に学んだことかな。そうは言っても、大変な時は大変だけど(笑)。
中村:そうですね。生活の中でいつも変化があるし、小さい時も可愛いですけど、もっと大きくなればまた可愛い部分も増えてくると思うので、今から楽しみです。
岩崎:私が母にやってもらったことをできる限り、娘にもやってあげたいな。
中村:いずれは娘にもお嫁に行ってほしいし、いつかは娘の子どもが夜泣きするのを、私も一緒に見るのかなと想像しています。
岩崎:えー! 早い(笑)。孫まで考えたこともないよ。結婚をしてほしいとは思うけど。
中村:『あなたもよく泣いていたのよ』と娘へ伝えたいんです(笑)。
――何年かしたら、意外と熱血ママになっているかもしれませんね。
岩崎:ガツガツいくお母さんにはなりたくないけど、わからないですよね(笑)。
中村:中にはストップウォッチを持っているお母さんもいますからね(笑)。そんなことを言いながら、私も口出ししちゃったらどうしよう。旦那さんからは『娘にどこまでやってほしいの?』と聞かれるから、『最低限4種目は泳いでほしい』と答えたら、その感覚がおかしいと言われて……。水泳をやっていない人からしてみると、25メートル泳げればいいとか、顔をつけられるようになればいいとか、そういうことらしいですよ。
岩崎:全然高い基準じゃないでしょう。4種目泳げるようになれば一生泳げるし、できるようになるのは個々で違うけれど、続けて通っていれば泳げるようになるんだから。
中村:よかったあ。恭子さんにそう言ってもらえて安心しました(笑)。
■「ママ」になって感じることとは?
――あらためて、「ママ」の楽しさ、喜びを教えて下さい。
岩崎:大変なこともあるけれど、子どもの笑顔で癒される。そういうことを大切にできたらいいよね。
中村:完璧を求めないようにすることも大切ですね。実は娘がもっと小さいころ、育児本を見て、その通りじゃないと不安になることもあったんです。でも、大きくなるにつれてその通りにいかないことが増えてくるので、全部受け止められる自分でありたいと思うようになりました。
岩崎:うちは予定日よりもだいぶ早かったから、できることが遅くても全然気にしなかったの。でも成長する中で不安になることは確かに出てくるよね。そこで抱え込まないで、自分が不安に思ったことは周りに聞くことが大事だと思うよ。礼子はもともと自然体だから、結婚してもお母さんになっても、このままでいてくれたらいいんじゃない。ストップウォッチを使うママになっちゃうところも見てみたいけど(笑)。
中村:私のほうが出産は先でしたが、恭子さんにいろいろと相談できると嬉しいです。いろいろとよろしくお願いします。
岩崎:こちらこそよろしくお願いします。まずはご近所ランチだね。