私の先輩の話です。
当時は高校生で毎日水泳漬けの日々を過ごしておりましたが、インターハイ出場という目標を掲げ、
日々部員皆で練習に励んでいました。
そして私は、大阪の強豪校に所属しており、毎年我が校からはインターハイ出場者を多数輩出し毎年決勝にも何名かは残っていました。
そんな我がチームでの出来事です。
インターハイ最終予選となる近畿高校が始まり最後のチャンスをものにしようと予選から激しいレースが行なわれていました。
わずか0.1秒制限が切れずに悔し泣きをする者、地方予選では大幅に記録を上げ歓喜する者、はたまた標準はインターハイのみとばかりに余裕シャクシャクの者と様々なドラマが会場では展開されます。
そんな中、先輩のSSさんなのですが、彼は200mバタフライが得意でインターハイの標準記録まであと僅かでしたが努力虚しく0.2秒ほど届かず肩を落としながらも「決勝に残れればもう一度チャンスがある」と思いながら残りレースを見ていました。
しかし、予選10位で決勝に残れず補欠1位という希望の光が一気に遠のく結果になってしまいました。 だが、すべての希望が絶たれたわけでは無かったのです!
昨年度のインターハイ王者の選手がインターハイ出場の為だけに手を骨折していたのですが予選を泳いでいたのです。
当然、王者は怪我をしていても悠々インハイ標準記録を突破し決勝を棄権する可能性が大きく,SSさんにチャンスが回って来そうです。
そして、繰上げ決勝進出の吉報はほんの数十分で届きました。
「SSさんがんばってください」
と皆の声援に背中を押され彼は決勝のレースの召集に向かいました。
そこで驚く事に、SSさんは何と棄権をした王者のコースでそのまま泳ぐことになっていたのです。
怪我をしていたとはいえ、さすがはチャンピオン!しっかりセンターコースで決勝進出しており、
一方SSさんは決勝センターコースなんて初めてです。
もちろん5コースの両隣の選手もインハイ決勝進出が間違いない程の実力者、SSさんはビビってしまって大変です。
しかしラストチャンスです。
SSさんも腹を括ってスタート台の前に立ちました。
後輩の私が言うのもなんですがSSさんに決勝センターの貫禄は微塵もなくコース紹介では全く存在感をアピール出来ぬままレースはスタートです!
ものの見事にセンターコースのSSさんが遅れを取り、4・5コースがぶっちぎりで前半を折り返して行き、SSさんも遅れながらも標準記録突破へ微妙な入りです。
チーム一丸で応援をしましたが無念にも記録突破ならず・・・
レース後、SSさんは「あれは無理やわ、自分が何秒くらいか全然わかれへんし離されるから焦ってしもて後半バテバテや」と言っていました。
その気持ちよく分かります。
私もあの場所でレースしていたら、どうなっていたかわかりません。
そう思うと、北島選手のように狙ったところでベストの泳ぎする彼の集中力と日頃のトレーニングのハードさが目に浮かびます。