2021年7月29日(木曜日)08時52分 配信
「東京五輪・競泳女子200m個人メドレー・決勝」(28日、東京アクアティクスセンター)
競泳女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した大橋悠依(25)=イトマン東進=が、200メートル個人メドレーも2分8秒52で優勝し、2冠を達成した。1大会で2つの金メダルを獲得するのは、夏季では日本女子史上初の快挙。競泳勢では2004年アテネ大会、08年北京大会で平泳ぎ2冠を果たした北島康介氏以来となる。歴史にその名を刻み、満面の笑みで金メダルを手にした。
電光掲示板でタイムと順位を確認した大橋は、ぺろっと舌を出し満面の笑みを浮かべた。ガッツポーズし笑顔とピース。日本チームへ手を振り、また笑顔。一つ目の金メダルを獲得した日は何度も涙を浮かべたが、終始笑顔を輝かせた。
「本当にまだ夢みたいで実感がない。なんか、本当に自分がやったことなのかなって感じです」。女子では史上初の1大会2冠を果たし「自分が史上初とかっていう実感がないのでビックリ」と目をぱちくりさせた。
150メートルを0秒07差の2番手で折り返すと、勝負の自由形。最後15メートルで「厳しいかな」とも思ったが「勝負を賭けて」息継ぎなしでスパート。「ラスト3メートルくらいでちらっと見た時、勝てるかなと思った」。0秒13差の大接戦をものにした。
平井伯昌コーチ(58)は「大会中の成長が大きい。自分が思うようになるから、雪だるま式に自信が大きくなった」という。大橋も「すごい気楽だった。メダルを狙って力む選手もいると思ったので。自分は気持ちに余裕がある分、そういうのを利用しようと思っていた」。金メダリストとなったことで生まれた心の余裕が、頭の余裕にもつながる。風格の勝利だった。
「高校生の時に平井先生に拾ってもらって良かった」。大橋はレース後、平井コーチへの感謝を口にした。滋賀・草津東高時代、彦根市で開かれた大会に、平井コーチが勧誘に出向いた。「タレントに満ちあふれている」と平井コーチ。「今までにない個人メドレーの選手だと思う。体形や性格も考えると大学後半から社会人に伸びると、勧誘の時から話した」。高校生ながら、美しいフォームで泳ぐ大橋の姿に一目ぼれ。大橋はその言葉を信じ、14年から平井コーチに師事した。
しかし基本的にネガティブ思考。頑固な性格もあり「辞める」と言ったことは一度や二度ではない。練習方針を巡って何度も対立し、言い争いにもなった。「迷惑も掛けたし、心配も掛けたし、なんだこいつと思わせたことも多分、幾度となくある。私も先生に対して『なんで?』って思ったことも本当にたくさんある」と大橋。
それでも真正面からぶつかり、向き合い続けたからこそ、互いに“折り合い”をつけられるようになった。
「全てそしゃくできている。大きな経験をさせてもらったし、感動ももらった」と平井コーチ。大橋も、輝く金メダルを胸ににっこり笑って言った。「先生を信じて良かった」-。
デイリーより