2018年8月10日(金曜日)08時46分 配信
◆競泳 パンパシフィック選手権第1日(9日、東京・辰巳国際水泳場)
環太平洋地域の強豪国が集結する4年に1度の水泳の祭典が開幕し、注目の日本代表・池江璃花子(18)=ルネサンス=が、女子200メートル自由形で1分54秒85の日本新記録で銀メダル。主要国際大会では初めてとなるメダルを獲得した。この種目のリオ五輪金で中長距離の女王レデッキー(米国)を後半に逆転した。続く東京五輪の新種目、混合400メートルメドレーリレーでも日本新記録での銀メダルに貢献。ダブル表彰台で、スーパーJKの笑顔が輝いた。
池江が力を振り絞った。レデッキーの姿が目に入った。「負けたくない」と、水をかく腕に力が戻った。自身の持つ記録を0秒19塗り替える、1分54秒85の日本レコード。主要国際大会初のメダルは銀色だった。「ここでベストが出ると思っていなかったのでうれしい」。お立ち台で、声が上ずった。リオ五輪3位、2017年世界選手権でも2位相当。堂々のタイムだった。
「正直、苦手意識が抜けない」という、専門外の種目。予選でも全体7位だった。いつも自信に満ちあふれている18歳も、不安に襲われた。「やっぱり自分は、自由形は世界では弱いんだ」「1分55秒00台なんて引退まで出ないんじゃないか…」。しかし、“弱点”を自覚したことで、不思議と力みが消えた。後半勝負ともくろんだ通り、前半100メートルを3位で食らいつき、ラック(カナダ)にこそ及ばなかったが、五輪で金メダル5個のレデッキーをかわした。
体格で勝る欧米のスイマーに対抗するため、6月末から、三木二郎コーチ(35)の提案で、ある取り組みを始めた。懸垂である。一見地味だが、力強い泳ぎに必要な広背筋を鍛えるにはもってこいのトレーニングだ。始めた時は、5回できるかできないか。今は10回を2セットこなし、「多分頑張れば12、13回までできる」と、胸を張れるまでになった。
一緒に懸垂してくれる三木コーチを逆にあおったり、楽しみながら汗を流している。「懸垂の中でも結果が出ている。パワーがついてきている」。とはいえ、本格的に始めてからはまだ1月半ほど。驚くべき進化のスピードだ。
最後の混合400メートルメドレーリレーでも第3泳者(バタフライ)として銀に貢献した。今大会は、最大8種目出場の可能性もある。自由形の表彰台で、カナダの国歌を聴きながら誓った。「東京五輪では、私が君が代を聴かせられるようになりたい」(太田 倫)