2012年8月13日(月曜日)17時06分 配信
読売新聞より
15歳の目から、涙があふれた。
「信じられない。本当に何を言っていいか分からない」
リトアニアの競泳代表は、男子3人、女子1人。その唯一の少女のルタ・ミルティテが100メートル平泳ぎで、母国に五輪の競泳で初となる金メダルをもたらした。
2011年世界選手権を制した女王レベッカ・ソニ(米)、北京五輪覇者のリーゼル・ジョーンズ(豪)ら実力者が居並ぶレースでも、臆する様子はなかった。予選、準決勝をいずれも全体1位で通過。決勝でも前半の50メートルをトップで折り返し、猛追するソニを0秒08差で振り切った。
五輪前まで、ほぼ無名の存在だった。ソニが目を丸くする。「予選の時から、素晴らしい競争相手になることはわかっていた。それにしても、15歳で金メダルとは驚き。将来さらに躍進する彼女と、一緒に泳げたことを光栄に思う」
10年に、「今後のキャリアのために」と勧める父の言葉に従い、英国南西部の港町プリマスに拠点を移してトレーニングに励んできた。1メートル72、64キロ。伸び盛りの力強い泳ぎで、大躍進を遂げた。
ゴール直後にあふれた涙は、表彰台でも止まらなかった。
「私にとって、とても大きな意味を持つ出来事。自分を誇りに思う」
爪には、緑や黄、赤など色とりどりのネイルアート。その指で何度も何度も目を拭い、ようやく笑顔を見せた。(田中潤)